教育・研究活動
研究開発

長尾 伸一(兼任室員・助教授)

■年次計画の概要

  1. 本学所蔵の西洋近代思想に関する資料の調査、利用方法の検討
    西洋近代思想史に関するホッブズ・コレクションなどの中央図書館所蔵の貴重図書や、STCなどのマイクロフィルム資料、また経済学研究科等が所蔵する関連するコレクションを調査し、インターネットを通じて学内外の研究者が有効に利用する方法を検討する。
  2. 近代イギリス思想史に関するデジタル・コンテンツの作成と公開方法の研究
    アバディーン大学など、思想史、文化史的資料についてのデジタル・コンテンツの公開を進めているイギリスの諸大学の貴重図書館と連絡しながら、有効な公開の方法を検討し、国際的な協力のあり方を構想する。

■年次計画の実績

1.

西洋近代思想について本学中央図書館が所蔵する中心的なコレクションであるホッブズ・コレクションの所蔵のあり方と、カタログの現状について調査を行った。またその使用方法についてコレクションの利用者のうち、当該分野についての第一線の研究者数名から、聞き取りを行った。
その結果、きわめて利用が困難であり、コレクションの十分な価値が発揮できていないとの意見が多く、また実際にもそう考えざるをえない面があることが判明した。
その理由は以下の通りである。

  1. 貴重図書に関する本図書館のカタログが総合的でなく、本図書館所蔵の他の関連する諸資料(とくに雑誌やSTC等のマイクロフィルム)とのクロス検索が可能でない。
  2. 経済学研究科付属図書館など他の部局にも、併用されるべき類似した諸資料が所蔵されているにもかかわらず、それらのカタログ自体の不備もあり、本図書館資料と併用した有効な利用が困難である。
  3. 京都大学などのような貴重図書の閲覧室を備えた図書館と比較して、資料の閲覧が不便であり、利用者を増やすことが難しい。
  4. とくに貴重図書の資料調査に十分に熟練していない本学および他大学の院生にとって、自己の研究テーマにかかわる資料を利用するためのガイドブックやチュートリアルが与えられないため、不要な労力を要することになり、有効に利用できない現状がある。

2.

以上と関連して、主に連合王国の大学図書館の貴重図書の利用状況をインターネットで調査するととともに、在外研究の際に実地調査を行った。実地調査先は連合王国アバディーン大学貴重図書室、グラスゴー大学貴重図書室、エディンバラ大学貴重図書室である。
その結果、アバディーン大学貴重図書室、グラスゴー大学貴重図書室ではすでにすべての貴重図書が通常の資料とともにオンライン検索が可能になっているだけでなく、学外からの検索も可能で、大学内外の利用者にとって利便性が非常に高いことが判明した。またスコットランドの諸大学では最大のコレクションを持つエディンバラ大学貴重図書室については、インターネットからの検索はまだ行われていないが、オンライン化自体は完了しているため、学内の端末の利用者にとっては非常に簡単に検索できることがわかった。
貴重図書室については、これらすべての大学が十分なスペース(十人以上が同時利用化)を持ち、数台のマイクロフィルムリーダーおよび検索用の端末二、三台が設置された貴重図書室を備えており、またとくにノートパソコンが利用可能なコンセントが閲覧机に備えられている。また貴重図書室には閲覧カウンターに常時閲覧者を監視可能なデスクが設けられて係員が常駐し、サーヴィスを行うととともに貴重資料の保存上でも配慮が行われている。
以上から、以下の改善が地域研究拠点大学の付属図書館としての本図書館の機能を大きく高めることが期待できると考えられる。

  1. 貴重図書の独立した閲覧スペースの確保
  2. 本図書館を中心とした、本学所蔵貴重図書と関連資料の総合カタログの作成
  3. 総合カタログのオンライン化

3.

貴重資料のデジタル・コンテンツとしての公開については、アバディーン大学貴重図書室について検討を行った。同図書館は学内重点プロジェクトのひとつである、同図書館が大部分の草稿を所蔵している哲学者トマス・リード研究の促進の一環として、WEB上での高解像度画像による草稿の映像データの公開を企画している。同校で3年前に開かれた国際リードシンポジウムに参加した際、そのサンプルが公開された。外国の財団の助成金を利用して行っていたこのプロジェクトは、データの多様な検索機能や、さまざまな図書館が所蔵しているリード関係の文献目録検索機能を付加している点で、本開発室のプロジェクトに似た野心的なものだが、現在のところ完成にはいたっていない。しかしWEB上ではすでにキーワード検索等が可能な草稿のオンラインカタログが、リードに関する包括的な文献目録、スコットランドの哲学者の伝記、掲示板とともに公開されている。このデザインは、たんに所蔵資料の公開、利用促進だけでなく、スコットランド思想という研究領域にとって有用であるように企画されているところに特長がある。これは図書館のWEB上での新しい研究補助機能として有益な貢献だと考えられる。
またとくにこの過程で、従来から画像データベースとして名高いロンドン大学ウォーバーグ研究所が所蔵データのデジタル化を進めていることが判明した。現状ではまだ公開されていないが、調査の必要がある。

  1. アバディーン大学のリードに関する研究補助のためのホームページ
    http://www.abdn.ac.uk/cssp/researchroom.shtml
  2. トマス・リードの草稿の新しいコレクション
    http://www.abdn.ac.uk/diss/heritage/collects/reid/reid2.htm (タイトルページ)
    http://www.abdn.ac.uk/diss/heritage/collects/reid/5i1_1r.htm (実例)

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