教育・研究活動
活動報告

■第27回オープンレクチャー

参加自由・入場無料です。関心のある方は是非お越し下さい。

日時2007年09月10日(月) 18:00~19:15
講師神保 文夫(名古屋大学大学院法学研究科教授)
タイトル江戸庶民の文藝と法-川柳近世法制史-
場所中央図書館5階多目的室
概要 「うんのよさとうとう二人 なが尋」(誹風柳多留二十二篇・天明八年) 江戸時代の庶民文藝というべき川柳─五七五の短詩には、人情の機微を突き、あ るいは社会や世相を風刺して、思わず微苦笑させられるものが少なくないが、文学と して鑑賞するだけでなく、当時の法制度や人々の法意識の一端を窺う材料としても興 味深いものがある。そのようないわば「法制史川柳」をいくつか紹介しつつ、法の諸 相を探ってみたい。
 江戸時代、貧困のため、あるいは犯罪を犯したりして村から逃亡することを「欠落(かけおち)」といった。現代では、「かけおち」といえば「駈落」と書いて、ふつ う男女の情事を原因とするものを指すが、江戸時代には原因の如何を問わず、失踪一 般を「欠落」と呼んだ。欠落人があると、その親族や五人組・町村役人(名主、組頭 など)に捜索義務が課され、一定期間内に見つけ出して連れ戻すよう命ぜられる。こ れを「日限尋(ひぎりたずね)」というが、この場合欠落人御尋者(おたずねもの)と親子・主従・師弟等の関係で目下にあたる者には尋を申し付けなかった。目上 の者を捜索逮捕させることは、儒教倫理上不孝を強いることになるからである。捜索 期間は通常180日、この期間中に尋ね出せないときは、捜索義務者に過料・急度叱 (きっとしかり)等の軽い刑罰が科され、あらためて「永尋(ながたずね)」が命ぜ られる。すなわち無期限の捜索命令であるが、実質的には捜索打ち切りに近い結果と なった。冒頭の句は、欠落した二人─その原因は読者の想像にまかされている─ が日限尋の期間中に捕まらず、永尋となってうまく逃げ果(おう)せたという意味で あろう。欠落した者の親族が「久離(きゅうり)」を届け出ると親族関係は法的に断 絶され、人別帳の記載を抹消されて「無宿(むしゅく)」となる。覚悟の上とはいえ、 欠落した二人にとってその後の生活は決して安楽な日々ではなかったものと思われる。 宿題句を一つ。上の例のように、法制史的な意味を考えてみて下さい。 「去 状をかく内しちを受に遣 」(誹風柳多留四篇・明和六年)
配布資料